Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
聞き込みをした人物に「知らない」と言われ、アノニマスはお礼を言った後、紫月たちのところに戻る。アノニマスの表情はいつもより固い。紫月は思わず声をかけた。

「アノニマス、無理に捜査に協力しなくていいんだぞ」

「あたしはあんたのために協力しているんじゃない」

アノニマスはそう言い、また聞き込みをするために行こうとする。その手を紫月が掴んだ。

「何だ?」

「……いや、お前は暁風歌が行きそうな場所に心当たりはないのか?ピンクダイヤモンドを盗んだ動機とかは思い付かないのか?」

紫月はこのようなことを言いたかったわけではない。しかし、本当に言いたいことよりも先にこの言葉が飛び出してきた。しかし紫月の心境などわかるはずもなく、アノニマスは顎に手を当てて考える。

「あの子が行きそうなところに心当たりはないな。逃亡犯が優雅にカフェで茶を飲んでいることはないだろうし、地元の三重県に向かっている可能性はリスクが高いからしていないだろうし……」

ひとりごとのように呟くアノニマスだったが、あることを思い出したらしく目を大きく見開く。
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