Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
風歌の脳裏に瑠璃と過ごした日々のワンシーンが浮かぶ。どれも思い出すだけで胸が高鳴る大切な思い出だ。

「……待っててね、瑠璃ちゃん」

弱々しい呟きは風に攫われて消えていった。



真夜は事件現場付近のカフェに入り、パソコンで暁風歌と桜町瑠璃のことを詳しく調べていた。戸籍や出身校、SNSに至るまで調べていく。

風歌のSNSは二年前に逮捕されてから更新されておらず、それ以前の投稿もほとんどが小説に関することだった。一方瑠璃のSNSは遊びに出掛けたことなどが多く投稿されていた。

『小説家の友達が本を送ってくれました〜!本がいっぱい!』

そんな文と共に投稿された写真には、本棚が映し出されている。しかしその本棚にあるのは一人の小説家のものしかない。馬酔木美空ーーー風歌の本だけだ。

リナリアの涙

アネモネと赤い糸

アザレアにキスを

アイビーと愛言葉

歌うマトリカリア

ひまわりの瞳

チグリジアの鎖

スミレ色の手紙

スイートピーの羽

ブルースターの雨

ストックとダンスを

マーガレットの祈り

私とフランネルフラワー
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