Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
本棚に並べられた本を見て、真夜はゆっくりと息を吐く。注文したアイスコーヒーを一口飲んでから、投稿を見ていく。するとあるものに目が止まった。

『友達と来るお気に入りスポット!』

そんな文面と共に投稿されていたのは、公園で撮られた一枚の写真だった。そこに一人の人物が写っている。風歌だ。当然顔は派手な美人になる前だ。どうやら二人のお気に入りスポットらしく、何度か投稿されている。

「この投稿の場所は……」

真夜が調べようとした時だった。マウスに置かれた真夜の手の上に誰かの手が重なる。驚いて真夜が顔を挙げると、そこには一人の男性が立っていた。

「誰?」

真夜は手を振り解こうとするものの、男性の力の方が強い。プラチナブロンドの髪にサングラスをかけた彼は真夜の掴む手に力を入れる。

「……痛いんだけど」

「すまない。ただ、調べる前に話を聞いてくれないか?天才ホワイトハッカーの島崎真夜くん」

この男性と真夜は初対面である。名前を知られていることに真夜は驚き、自身のスマホを見た。紫月と電話をした以降、スマホを一度も見ていない。
< 158 / 306 >

この作品をシェア

pagetop