Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「僕のスマホ、ハッキングされた痕跡が僅かにある。あんたがやったわけ?」

「彼女のことをパソコンで調べている人物がいることに気付いてね。悪いけど、尾行と君のことを調べさせてもらったよ」

男性の言葉に真夜は確信する。暁風歌は何も考えずに宝石を盗んだわけではない。協力者がいたのだ。

「暁風歌の協力者なんだ。だから僕を止めた。暁風歌の目的は何?希少なピンクダイヤモンドをただ盗むことだけが彼女の目的じゃないんでしょ?」

「そうだね。目的は盗むことじゃない。あの美しい女性の目的はそんな浅いものじゃない。海よりも深く、ピンクダイヤモンドよりも価値がある」

まるで舞台劇を演じているかのように男性は大袈裟に体に動作をつけて言う。その仕草、そして男性の言った「美しい」という言葉に真夜は吹き出した。人の容姿をどうこう言ってはならないとわかっていても、口は止めることができない。

「おじさん知らないの?暁風歌のあの綺麗な顔は整形だよ。作り物の美しさ。偽物なわけ。それでも綺麗だって言える?宝石ならイミテーションだよ」
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