Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
風歌が幸せそうに笑う。しかしその数秒後、彼女の瞳から光が消えた。心臓が止まり、生物として逃れることのできない死を迎える。その最期をアノニマスは見届けた。

「……太宰、この子をあんたの友人に解剖させてくれ」

風歌を抱き締めながらアノニマスは言う。紫月は「わかった」と言い、法医学研究所で働いている幸成に連絡を取った。

連絡をしている最中、紫月は何度もアノニマスのことを見てしまった。彼女の憂いに満ちた瞳も、小刻みに震える体も、全てがドラマのワンシーンに見えた。紫月の胸がドクドクと鼓動を早める。

(綺麗だな……)

不謹慎だとわかっていても、紫月の心はそう思ってしまうのだった。














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