Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「今は昨日の事件のことを考えたいので、捜査一課の事件は捜査一課に任せます」

「ふーん」

尚美は興味なさげに言い、スタスタと歩いて行く。紫月が「未解決事件捜査課」の部屋に入った時間は彼女とそう変わらなかった。部屋の中には蓮と彰、そして碧の姿があった。紀人のデスクには誰も座っていない。しかし誰がいようといなかろうとこの部署では気にする者はいない。

「太宰さん、おはようございます!さっき法医学研究所の方から電話ありましたよ。何でも直接会って解剖結果を伝えたいって坂口さんが言ってたそうです」

「幸成が?わかった。あとで連絡をしておく」

紫月がスマホを見ると、幸成からメッセージが送られてきていた。既読がなかなかつかないので痺れを切らして「未解決捜査課」まで連絡してきたのだろう。紫月が返信をしようとした時だった。「太宰さん!」と声をかけられる。碧が興奮したように言った。

「夏目くんから聞きましたよ!昨日の事件の容疑者、元小説家だったんですね。まさか女子高生に人気だった馬酔木美空だったなんて」
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