Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「警察が何のご用で?もうダイヤモンドは海外ブローカーの手に渡って探すのは不可能。しかも犯人であるあの女は死亡。もう捜査の必要はないのでは?」

その口調はどこか嫌味を含んでいるものだった。蓮はその声に「うっ」と言いながら顔を強張らせたものの、紫月は顔色を変えることなく口を開く。

「宝石の取り返すことができなくなったのは、我々の落ち度です。ですが今回はその窃盗事件の件で来たわけではありません。窃盗事件と関係はありますが」

「どういうことだ?」

庄之助ではなく文雄が訊ねる。紫月はアノニマスを見た。彼女の体が小刻みに震え出す。アノニマスは血走った目を二人に向けながら一歩前に出た。

「梶井さん、あなたの芸能事務所は政界関係者や他の芸能事務所社長との接待に事務所に所属する女性を使っていましたね。その接待で女性を酔わせ、ホテルに連れ込んで性的暴行に及ぶことも多々あった。でもあなたは「体を売ればテレビに出させる」と言い続けた」

「な、何を根拠にそんなことを!」
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