Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
紫月の言葉に庄之助は黙り込んだ。アノニマスが怒りを滲ませながら言う。

「桜町瑠璃さんも同じ被害に遭っていた。そして耐え切れなくなった彼女は風歌にそのことを仄めかし、命を断とうとした。そして風歌はあなたの会社について調べ、この違法接待の件を突き止めた。でもそんな彼女をストーカーと言って逮捕したのがあなたですよね?国木田さん」

「私は梶井からストーカーがいると相談を受けたんだ!そして、実際に彼女が梶井の周りを付き纏っていた。だから逮捕しただけだ」

文雄は淡々とそう言ったものの、言い訳をすることは紫月たちの想定内だった。蓮が鞄から資料を取り出す。

「あなたの娘さんは梶井さんの事務所に所属し、現在アイドルグループのセンターで活躍しているそうですね。だから梶井さんのやっていることが違法と知りながら目を瞑り続けていた」

「娘がアイドルだから何なんだ?不正を知っていた証拠にはならない」

「いや、あなたは梶井さんの不正を知っていた。だから暁風歌を殺害することにしたんだ。もし彼女が生きて逮捕されてしまえば自分たちにも捜査の手が及んでしまう危険があったから」
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