Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
君の名に花束を
2022年 7月1日 東京都新宿歌舞伎町 午前10時半頃
指定されたバーへと紫月は真夜と共に向かう。ホストクラブやガールズバーが数多く並んだ夜の街である歌舞伎町だが、朝でも人通りは多い。
「バーと指定されているがお前は入るなよ。未成年なんだからな」
隣にいる真夜を紫月はジロリと見る。しかし、当の本人は涼しい顔で「飲まなきゃいいでしょ」と言っている。
そのバーは歌舞伎町の裏路地にポツンとあった。煌びやかな大通りから外れているため、よく見ていないとバーがあることなど気付かないだろう。そのバーの重いドアを開けると、店内には黒髪を束ねた女性のバーテンダーがグラスを拭いており、その様子をカウンター席に座った男が眺めている。男の近くにはワインボトルと飲みかけのグラスが置かれていた。
「あの人だよ」
真夜の言葉に紫月は迷わず男に近付く。そして隣の椅子に腰掛けた。
「朝からワインとは随分と寛いでいるんだな」
口調が優我や智也のような嫌味なものになってしまう。男ーーーウィリアム・ドイルは紫月の方を向いてニコリと笑った。
指定されたバーへと紫月は真夜と共に向かう。ホストクラブやガールズバーが数多く並んだ夜の街である歌舞伎町だが、朝でも人通りは多い。
「バーと指定されているがお前は入るなよ。未成年なんだからな」
隣にいる真夜を紫月はジロリと見る。しかし、当の本人は涼しい顔で「飲まなきゃいいでしょ」と言っている。
そのバーは歌舞伎町の裏路地にポツンとあった。煌びやかな大通りから外れているため、よく見ていないとバーがあることなど気付かないだろう。そのバーの重いドアを開けると、店内には黒髪を束ねた女性のバーテンダーがグラスを拭いており、その様子をカウンター席に座った男が眺めている。男の近くにはワインボトルと飲みかけのグラスが置かれていた。
「あの人だよ」
真夜の言葉に紫月は迷わず男に近付く。そして隣の椅子に腰掛けた。
「朝からワインとは随分と寛いでいるんだな」
口調が優我や智也のような嫌味なものになってしまう。男ーーーウィリアム・ドイルは紫月の方を向いてニコリと笑った。