Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
紫月はウィリアムの手から本を取り、ページをめくっていく。本には作者の名前などは書かれていない。しかし、紫月はこの本が風歌によって書かれたものだとわかった。

「この本は風歌さんが桜町さんのためだけに書いた世界で一冊しかない物語です。青い薔薇の花言葉は「夢叶う」「奇跡」「神の祝福」です。桜町さんを応援し、見守っているというメッセージを風歌さんは込めたんでしょう」

「花言葉……」

花や植物に対して象徴的な意味を持たせたものだ。そういうものがあると紫月は知っていたものの、花言葉などは一つも知らない。

「知っていましたか?風歌さんはずっと桜町さんへの想いを小説に込めていたんですよ。彼女の作品にはどれも花の名前が入っているんです。彼女のペンネームにも」

「どんな意味があるんだ?」

ウィリアムはスマホを取り出し、馬酔木美空の小説を検索する。そして一つずつ教えてくれた。

リナリア「この恋に気付いて」「幻想」「乱れる乙女心」

アネモネ「儚い恋」「恋の苦しみ」

アザレア「恋の喜び」

アイビー「永遠の愛」「不滅」

マトリカリア「深い愛情」「集う喜び」「楽しむ心」

ひまわり「私はあなただけを見つめる」「憧れ」
< 188 / 306 >

この作品をシェア

pagetop