Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
アノニマスの手は西洋菊に触れる。その小さな花弁に触れながらアノニマスは言う。

「花言葉が好きなお前なら、きっとこの花言葉もわかるだろう。こんな偽物のあたしだけど、風歌、お前のことーーー」

アノニマスの呟いた言葉を風が攫っていく。風は空高く舞い上がる。まるで天国にまで彼女の言葉を運んでくれているようだった。

「いつか、本当のことを話せたらよかったんだがな」

そう言い、アノニマスは立ち上がって歩いて行く。夏の風は湿り気が強く、彼女の体に容赦なく纏わりつく。しかしアノニマスは表情一つ変えない。

地面に置かれた西洋菊は、太陽に向かって顔を向けていた。















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