Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
Interlude Plan
男は女の一挙一動を見逃すまいとするかのように見つめる。女はそんな男の視線に満足げに口を開いた。

「殺人事件が起きた時、警察官がどんな捜査をするかあなたならわかるでしょ?殺人事件の被害者と関係が薄ければ薄いほど、容疑者の絞り込みは難しいってこと」

女の言う通りである。警察官は事件が起きた際、まずは被害者の周りにいる人物を疑う。特に殺人事件となっては尚更周りにいる人間との関係性を徹底的に洗い出す。殺人事件で身内が容疑者だった割合は四十%にものぼるからだ。

「確かにそうだな……」

「私が憎んでいる人間を私が殺せば疑われる。でもそれはあなたも一緒よ。娘さんをここまで追い詰めた人間が憎いでしょ?殺したいでしょ?」

男は先ほどの娘がクラスメートにかけられた言葉を思います。どれほど苦しい思いをしたのだろうか。そう思うだけで悲しみは憎しみに変わった。娘と同じくらい、いやもっと苦しんで死ねばいい。そう思った。

「私があなたの憎んでいる人間を殺す。だからあなたは私が憎んでいる人間を殺してちょうだい」
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