Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「俺はビールと炒飯と玉子スープで」

「私は激辛四川麻婆豆腐と餃子をお願いします」

注文を済ませた後、アノニマスはお冷やを飲みながら「楽しみだ」と笑う。それを見ながら紫月は言った。

「激辛なんてよく食べられるな」

「あたしから見れば、あんな甘ったるいものよく食べられるなと思うぞ」

今日は先月の借りを返すために一緒に食事に来ている。先月、紫月はスイーツビュッフェについて来てほしいとアノニマスに頼んだ。その際に激辛料理を奢ることを約束したのだ。

「お前、普段は何を食べているんだ?」

「もちろん辛いものに決まってるだろう。最近は火鍋を作って食べた」

そう言い、アノニマスはスマホで撮った写真を見せてくれた。辛そうな真っ赤なスープの周りに牛肉やキノコ類、ほうれん草などが並べられている。牛肉などの具材を赤いスープにつけて食べるのだ。

「いかにも辛そうだな」

紫月が顔を真っ青にしながらそう言うと、アノニマスが「あたしが好きなのは四川発祥の辛いものだからな」と返す。どうやら火鍋は発祥国である中国でも地域によってスープの味が違うらしく、辛くないものや海鮮を使ったものもあるようだ。
< 198 / 306 >

この作品をシェア

pagetop