Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
(ああ、最悪だな……)

紫月が憂鬱になりながらそう心の中で呟いたその時、紀人が新聞から顔を上げる。その目は紫月と蓮を見つめたものの、新しくこの部署に来た人間に興味はなさそうだ。

「ああ、新しく来た奴か。よろしく」

気怠げな声で紀人はそう言った後、また新聞に目を落とした。「未解決捜査課」の部屋には、時折り彰の笑い声が口から漏れるだけであとは静かだ。忙しい警視庁にある一室とは信じられない。否、信じたくない。

「夏目、絶対に捜査一課に戻るぞ」

「もちろんです!太宰さん」

紫月の囁きに蓮は真剣な表情で答えた。















< 21 / 306 >

この作品をシェア

pagetop