Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
少しオドオドしながら雨は訊ねる。穏やかな笑みを浮かべたままアノニマスは首を横に振った。
「いいえ、私は警察に協力をしているだけの一般人です。普段は小説家をしています」
「そうですか」
雨がアノニマスから目を逸らす。すると成美がキッチンへと向かった。紫月たちにお茶を用意するためだろう。それに気付いた蓮が「お構いなく」と声をかけたものの、成美はキッチンに立ったままだ。
「あら。ティーカップはどこかしら?お茶菓子はどこにあるんだっけ?」
あちこち棚を開けたり閉めたりを繰り返している。匠が苛立ったように「何してるんだ!」と声を荒げた。すると成美の顔は不機嫌になり、今にも夫婦喧嘩が始まりそうな雰囲気が漂う。
その時、雨がため息を吐きながら立ち上がった。キッチンに向かうと迷うことなくティーカップとお茶菓子を出す。
「これでいいでしょ?」
「雨、知ってるならあなたがお茶を最初から淹れなさいよ」
雨にお礼を言うことなく、成美は紅茶とお茶菓子であるマドレーヌを紫月たちの前に運んだ。おいしそうなマドレーヌに頰が緩みそうになるのを堪え、紫月は口を開く。
「いいえ、私は警察に協力をしているだけの一般人です。普段は小説家をしています」
「そうですか」
雨がアノニマスから目を逸らす。すると成美がキッチンへと向かった。紫月たちにお茶を用意するためだろう。それに気付いた蓮が「お構いなく」と声をかけたものの、成美はキッチンに立ったままだ。
「あら。ティーカップはどこかしら?お茶菓子はどこにあるんだっけ?」
あちこち棚を開けたり閉めたりを繰り返している。匠が苛立ったように「何してるんだ!」と声を荒げた。すると成美の顔は不機嫌になり、今にも夫婦喧嘩が始まりそうな雰囲気が漂う。
その時、雨がため息を吐きながら立ち上がった。キッチンに向かうと迷うことなくティーカップとお茶菓子を出す。
「これでいいでしょ?」
「雨、知ってるならあなたがお茶を最初から淹れなさいよ」
雨にお礼を言うことなく、成美は紅茶とお茶菓子であるマドレーヌを紫月たちの前に運んだ。おいしそうなマドレーヌに頰が緩みそうになるのを堪え、紫月は口を開く。