Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

摩天楼の殺人

2022年　4月4日　午前10時半頃

紫月と蓮が「未解決捜査課」に配属されて四日が経った。この部署での一日の過ごし方は毎日変わらない。

出勤した後は、紀人たちはそれぞれのデスクに腰掛けた後、自分の好きなことをそれぞれ始める。誰も棚にある資料などを取ろうとはしない。お昼時になるとお昼を食べに全員出て行き、また戻って来る。しかし戻って来ない人もいる。夕方になると一人ずつ何も言わずに帰って行く。そんな日々に、紫月は顔を真っ青にさせつつも、心の中に激しい炎を燃やした。

（こんなところで警察官としての人生を終えてたまるか！）

捜査一課に返り咲き、また修二の隣に並びたい。その夢を一日でも現実のものにしようと紫月は蓮と共に誰も見ていない資料と向き合っている。

「そんな資料見てもどうにもならないよ。ぼんやり生きてた方が幸せじゃない？ここに座ってるだけでお給料出るんだよ」

一度、資料を見ていた際に二人は彰にそう言われた。しかし紫月はその言葉を無視して資料に目を通す。未解決事件を一つでも解決できたなら、捜査一課に戻る道に繋がるかもしれないと信じているためだ。