Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「俺がミステリーが嫌いなのは知ってるだろ?それを読むくらいなら激辛料理に付き合った方がマシだ」

紫月の言葉にアノニマスはフッと笑う。その表情は紫月の心に強く焼き付けられた。



それから数日、紫月と蓮は太陽を殺害した犯人を見つけるために奔走している。尚美たちも手伝ってくれているものの、手がかりは見つからない。政典から話を聞いたものの、やはり事件解決に繋がるようなものはなかった。

『与謝野太陽さんだけど、小麦アレルギーによるアナフィラキシーショックを起こした後、頭を殴られて亡くなっているね』

太陽の解剖を担当した幸成の言葉が、紫月の頭の中にふと浮かぶ。雨の言った通り、太陽には間違いなく小麦アレルギーがあった。

「どうすべきだろうか……」

紫月はため息を吐く。手帳にメモした内容なども見返してみた。真っ先に目に留まったのはアノニマスが調べてほしいと言ったリビングの写真の情報だった。

『あの写真は、祖父が経営している工場で撮ったものです。祖父がまだ元気だった頃、よく工場に預けられて遊んでいました。工場の裏にクローバーがたくさん咲いていて、そこで太陽と遊んでいました』
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