Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

電話で紫月は雨に訊ねたところ、そう淡々と答えてくれた。その後、紫月は雨と太陽の祖父の工場について調べた。祖父の工場は雨が中学生の頃、祖父が亡くなったことで潰れてしまっている。祖父の工場は東京ではなく千葉にあった。

「二人の祖父の工場を調べても意味がないな」

聞き込みにでも行こうかと考えていた時だった。「未解決捜査課」のドアが勢いよく開く。碧が「大変です！！」と大声で言った。その額には汗が浮かび、息を切らしている。

「何だ、騒がしいな」

新聞を読んでいた紀人が顔を顰めながら碧を睨むように見る。しかし緊張したように尚美はメイクをする手を止め、彰もスマホから顔を上げながら「どうした？」と訊ねる。紫月と蓮も碧の方を見つめた。

「太陽くん殺害事件の犯人が自首して来ました！」

「えっ、誰なんですか！？」

蓮が訊ねる。碧は額の汗を拭った後、再び口を開いた。

「堀内政典です！」

その名前を聞いた刹那、紫月は部署を飛び出した。