Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「芥川さんはどう思いますか?堀内が犯人だと思いますか?俺は、納得がどうしてもできません!」

「……しかし、供述内容に不審な点はないぞ。堀内政典の自宅から小麦粉も見つかっているし、凶器に指紋が僅かながら付着していた。堀内以外が犯人とは思えないが」

紫月は唇を噛み締める。修二の言う通りだ。政典以外の人間が犯人であるという証拠はどこにもない。捜査一課は政典を殺人で起訴する準備を進めていくだろう。

(どうしてこんなにもモヤモヤするんだ?)

理解できない気持ちに苛立ちを覚えながら、紫月は部屋を出る。そしてしばらく考えた後、スマホを取り出した。



紫月は目の前の中学校を見つめる。政典が教師として勤めていた中学校だ。そんな学校は今、授業中のためか校庭に生徒の姿はない。そして静かだ。

(でも明日からはマスコミが辺りを取り囲んでいるんだろうな)

中学校教師が未成年を殺害。そんな発表を警視庁がした翌日は、この辺りは大騒動になるだろう。彼らにとって事件は金塊のようなものだ。それに群がり、金塊から光が失われるまで執拗に追い続ける。
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