Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「おい、何故部下じゃなくてあたしが呼び出されなくちゃいけないんだ!」

紫月に怒りを含んだ声がかけられる。顔を下に向けると、そこにはアノニマスの姿があった。パステルグリーンのブーケ柄のワンピースにボンネット、レースの日傘を差している。

「呼び出して悪かった。辛いものを奢るから付き合ってくれ」

「お前は何度あたしに同じことを言えばいいんだろうな?あたしはお前の協力者ではあるが、毎日捜査に付き合えるほど暇じゃないと何度言えばわかる」

可愛らしいお嬢様のような甘い服装に合わず、辛口な言葉が飛び出す。紫月は「すまない」と謝っているものの、内心はアノニマスが来てくれたことにホッとしていた。

「中学教師が犯人だったんだろう。今更何を調べるというんだ?」

電話で呼び出した際、堀内政典のことは話してある。呆れたように言うアノニマスに対し、紫月は「わからん。だが、調べないと気が済まないんだ」と言いながら学校の敷地内に足を踏み入れた。
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