Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
突然刑事が来訪してきたことに、職員室にいる教師陣は少し戸惑った様子だったものの、「校内見学をしたい」という紫月の要望に応えてくれた。警察からすでに政典が罪を犯したことは伝わっていたのだろう。校長は顔を真っ青にしながら、噴き出ている汗をハンカチで拭いていた。

「堀内政典は担当科目は理科で、科学部の顧問をしていたようだ」

手帳にメモをした政典の情報を紫月が言うと、アノニマスは「理科教師で科学部顧問。どれだけ理科が好きなんだ」と口にする。

廊下を歩いていると教室が見えてくる。授業を学校の学ランやセーラー服を着た生徒たちが真剣な様子で聞いていた。生徒たちの様子から察するに、まだ政典のことは生徒たちは知らされていないようだ。

「自分たちの授業を受け持っていたかもしれない教師が殺人で逮捕されたと知ったらパニックだろうな」

どこか冷めた目でアノニマスは教室を見つめる。教室にいる生徒たちは授業に集中しているためか、紫月たちに気付いていない。それが彼にとってありがたかった。
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