Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
今日も四人が好きなことをしている中、紫月と蓮は読む資料を選ぶため棚へと向かう。未解決事件は令和や平成のものだけでなく、昭和のものまで揃えられていた。

（解決することを考えたら、時間が経っている昭和のものより最近のものの方がいいな）

そう思いながら棚を見て回っていた時、紫月の目にある事件の資料が目に留まる。刹那、彼の胸の中はまるで重い岩でも乗せられたかのようにズンと重くなり、頭が痛くなっていく。

「童話殺人事件」

そう書かれた背表紙を視界に入れることができず、紫月は顔を逸らす。体から力が抜ける感覚を覚え、床に膝をついてしまった。

「太宰さん、大丈夫ですか？」

隣で資料を選んでいた蓮が紫月に駆け寄る。蓮に肩を掴まれた時、紫月は初めて自分の息が荒くなっていることに気付いた。

「ちょっとうるさいんだけど！こっちはメイクに集中してるんだから静かにしてよね！」

「ユキちゃんの緊急生配信が今から始まるから静かにしてくれない？」

コンシーラーを手にした尚美、そしてイヤホンを耳にさした彰に注意され、紫月と蓮は「すみません」と謝る。ここで仕事をしようとする二人は、尚美たちにとって同族ではなく異分子なのだ。
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