Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

献身

ファミレスを出て真夜と別れてから、紫月はアノニマスと共に政典の自宅へと向かった。政典の自宅であるアパートは江戸川母子が住むアパートの斜め前にあり、ゴミ捨て場などは二つのアパートで共有しているようだった。

政典の住む部屋の中には、科学雑誌などが乱雑に置かれていたものの、特に気になることはなく、そのまま解散となってしまった。

そして政典の自宅を捜索した翌日、紫月は目を覚ました後、すぐにタバコを持ってベランダへと向かう。朝の六時半だというのに、空気はすでに熱を含んでいるように感じた。

タバコに火をつけ、煙を吸い込む。口から吐き出した息が消えていくのをぼんやりと眺めていた。頭の中は事件のことで詰まっている。

(何故、政典は太陽くんを殺さなくてはならなかったんだ?)

警視庁は昨日の夕方に会見を開き、政典が自首したことを記者たちに伝えている。教師が未成年を殺害したことで、ネットではみんな好き勝手にコメントを残していた。
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