Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
その時だった。紫月のスマホが振動する。電話がかかってきていた。相手はーーーアノニマスである。紫月の心臓が大きく跳ねた。

「もしもし」

『朝早くに済まない。でも、どうしても確認してほしいことがあるんだ』

アノニマスはどこか興奮したように上擦った声で話していた。そんな彼女に胸の高鳴りを覚えつつ、紫月は「確認?何を確認するんだ?」と訊ねる。

『容疑者の服と江戸川学の制服を調べてほしい。大至急だ!』



警視庁の科学捜査班に紫月は依頼し、その結果は数時間後にははっきりとわかった。紫月はその鑑定結果を持って走る。取調室の扉が開き、中から政則と取り調べを担当していた智也、そして記録を担当していた優我が出てきた。三人を紫月は呼び止める。

「三人とも、待ってくれ!!」

紫月の言葉に優我と智也は露骨に顔を顰めた。紫月の必死の形相に政典の顔が初めて表情を変える。酷く驚いている様子だった。

「役立たずのお前が何の用なんだ?俺らはお前と違って忙しいんだよ!」

優我が紫月の前に立ち、彼を睨み付ける。それに怯むことなく紫月は口を開いた。
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