Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「大事な話だ。堀内政典、お前は与謝野太陽くんを殺害していない!」

「はぁ?お前、何を言ってるんだ?」

呆れたようにため息を智也が吐く。しかし、紫月は彼のことを見ようとはしなかった。紫月の目は政典を捉えていた。彼は今、激しく動揺しているように見える。

「な、何のことですか?私があの子を殺したんです!間違いありません!犯人は私です!」

政典は手錠をかけられた手を動かしながら話す。その声は、取調室の中の中にいた時のような冷静なものではない。動揺と焦りがはっきりと見える。

「お前、適当なこと言ってるんじゃねぇぞ!」

「証拠はあるのか!?」

優我と智也が紫月に詰め寄る。その顔は怒りに満ちていた。紫月は一方後ろに下がり、証拠である資料を取り出そうとした。その時である。

「その話、聞かせてもらおうか」

紫月の背後から太く凛とした声が響いた。振り返ると修二が立っている。修二の姿を見た刹那、優我と智也は口を閉ざした。思わぬ救世主の登場に紫月は感謝を覚える。
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