Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
アノニマスは学を真っ直ぐに見つめ、自分の推測は間違いではなかったのだと理解する。目の前の子どもは嘘を吐くのがあまりにも下手だ。

「単刀直入に言います。与謝野太陽さんを殺害したのはあなたですね」

アノニマスがそう言うと、学は誰が見てもわかるほどに同様した。しかしすぐに「犯人、うちの先生だったじゃん」と言う。アノニマスは口角を上げた。

「先生が犯人かどうかは、ルミノール反応を調べればすぐにわかります。先生の衣服から血液が発見されなければ、先生が犯人でない証拠となりますから」

「そ、そんなの、血液のついた服を捨てたんじゃないですか?」

必死にこの場を逃れようとする学にアノニマスはため息を吐く。あの殺人は計画されたものではない。だからこそ、これほどまでに大きな穴が空いていたのだ。

「捨てることは不可能ですよ。お二人の住むアパートの燃えるゴミの日は事件の起きた前日です。ゴミ出しの日以外にゴミを捨てたら、誰が捨てたのかと騒ぎになります」

「なら、他のゴミ捨て場に持っていけばいいじゃないですか!!」

「それも無理ですね。ゴミ捨て場は家やマンションの近くにありますから、誰かに見られる可能性の方が高いです。それに最近は防犯カメラを設置している家や自治体が多くなりましたから、証拠が映像という形で残ってしまいます」
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