Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
アノニマスの言葉に学は顔を俯かせる。彼にこれ以上の反論ができるカードは何も残っていない。アノニマスは畳み掛けるように続ける。

「恐らく身代わりになると先生の方から言ったのでしょう。ですが、あなたは人の人生を奪った。その罪を他人に背負わせていいと本気で思っていますか?自分の罪から目を逸らし、逃げ続けた先に待ち受けるのは、光でも幸福でもありません」

「……うっ、ううっ……」

鼻を啜る音が会議室に響く。数分彼は涙を流した。そして顔を上げる。学の両目は赤く腫れていた。

「僕が、殺しました。先生は無実です」

「……詳しく聞かせてもらえるかな?」

蓮が真剣な表情で訊ねる。学は少しずつ話し始めた。

学は粉塵爆発の映像を見てから、自分でも実験がしたくなった。しかし学校の理科室ですることは当然できない。そこでたまたま見つけた廃工場で実験をすることに決めた。

小麦粉を風で舞い上がらせ、実験を始めようとしたその時、太陽がふらりと工場内に入ってきた。工場の空気中には小麦粉が舞っている。一瞬にして太陽はアナフィラキシーショックを起こし、倒れ込んだ。
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