Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「これ……」

「これはあたしの推測に過ぎないのだが、太陽くんが工場に行ったのは雨さんのためにクローバーをつみに行ったからじゃないか?幼い頃の楽しかったことを太陽くんは覚えていたんだよ」

雨はクローバーを泣きながら抱き締める。アノニマスは彼女を優しく見守っていた。



事件が無事に解決した夜、紫月の姿はタイ料理屋にあった。アノニマスに奢るために来ている。

目の前に座るアノニマスはしばらくメニューを見た後、「グリーンカレーにしよう」と言った。グリーンカレーとはタイカレーの一種であり、青唐辛子とココナッツミルクで作るのが特徴である。青唐辛子と聞くだけで紫月の舌の上はヒリヒリと痛む。

「太宰は何にするんだ?」

「そうだな……。生春巻きにする」

注文を終え、紫月は水を一口飲む。するとアノニマスが「なぁ」と話しかけてきた。その表情はどこか緊張しているように見える。

「この前、中華料理屋で話そうと思っていたことを話していいか?」
< 249 / 306 >

この作品をシェア

pagetop