Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
Interlude Cheers
穏やかなBGMが流れるバーのテーブル席に女は座っていた。目の前に置かれたカクテルを飲み、時折り腕時計で時間を確認する。そろそろ彼がこのバーにやってくる頃だ。

午前一時を過ぎた頃、バーの扉が大きな音を立てて開く。そこには高揚した様子の男がいた。女が手を挙げて自分のいる場所を示す。男はすぐに女のいるテーブル席に来た。

「……うまくいったみたいね」

「ああ。まさかあれほどうまくいくとはな……」

この夜はいつもとは違った。二人が初めての事件を起こした夜である。女の人生を踏み躙った人間の命を奪った記念すべき日である。

「処理も完璧だ。誰も俺たちの仕業だとは考えないだろう」

「よかった。やっぱりあなたと手を組んでおいて正解だったみたいね」

バーテンダーが男に近付いてくる。カクテルの注文を聞きに来たのだ。男は少し考えた後、マルガリータを注文した。テキーラ、ホワイトキュラソー、レモンジュースをシェークしたカクテルである。

「マスター。私も注文いいかしら?」
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