Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
『わかった。空いた時間でやろう。ただ、早見蘭という女性の件は事件性は低いんだろう?』

「そうだな。早見さんの方は今は考えなくていい。話したかっただけだ」

二言三言交わした後、電話は切れた。先程までアノニマスと繋がっていたスマホを、紫月はタバコの煙越しに見つめていた。



翌日、早見蘭の解剖が行われた。

事件性があると現場で判断された遺体の解剖には、警察官が解剖に立ち会うことが多い。しかし事件性がないと判断されれば、監察医たちに任せて解剖結果を警視庁で聞くだけでいい。

紫月は「未解決事件捜査課」にて、今日も数多く存在する未解決事件の資料と向き合っている。時折り、捜査に協力してくれるようになった彰や尚美と言葉を交わす。碧と蓮は非番である。紀人は相変わらず新聞を読むだけで仕事はしない。

いつも通りに今日は過ぎていく。解剖が終わった昼頃には幸成からの電話があり、解剖結果が伝えられる。

『早見さんの死因は心不全だったよ。お風呂に入っている最中に突然発症したんだと思う』
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