Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「どこへ行くんだ?」

珍しく紀人が口を開く。彼はいつも部署内で新聞を読み、黙って過ごしていた。紫月は早口で「法医学教室です」と言い、彼を押し除けるように傍を通りながら言った。

「二十六歳女性の遺体が盗まれたですよ!!」

紫月の一言に紀人の目が見開かれる。しかし、彼はそれに気付かぬまま警視庁を飛び出した。














< 275 / 306 >

この作品をシェア

pagetop