Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「とりあえず、法医学教室の監察医たちの過去から洗っていきましょう」

紫月の言葉に紀人が真っ先に「わかった」と答え、会議室を出て行った。早速聞き込みでも行くのだろう。「刑事は足で事件を追え」と教えられた世代だ。真っ先に体が動くのだろう。

(まさか、末広さんがやる気になるとは思わなかったな)

紫月は嬉しさを感じながらそう思った。チームとしてようやく「未解決事件捜査課」が一つになったようなそんな気がしたのだ。

「太宰さん!僕も聞き込み行って来ます!」

「俺も班のみんなと協力して調べてみよう」

修二と蓮も真剣な顔でそう言い、会議室を出て行く。その後ろ姿を見送ってから、紫月はスマホを取り出して真夜に連絡を取った。



それから数日。紫月たちは一丸となって捜査に当たっているのだが、大きな進展は見えない。

「ハァ〜。今日も手がかりなしか。雪ちゃん、俺を癒してくれ〜」

デスクに突っ伏した彰がスマホを取り出し、写真フォルダを開ける。そこには推しアイドルの写真がズラリと並んでいた。
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