Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「でも、遺体の保管を自宅以外でしているとなるとどこで保管してるんでしょうか。この暑さですし、放置するわけにはいきませんよね。貸し冷凍庫みたいなのってあるんでしょうか」

蓮がグシャグシャと髪をかき乱しながら言う。その顔は疲労困憊と言っているように見えた。

紫月は「未解決捜査課」の全員の顔を見て息を吐きそうになる。捜査があまりにも進展しないことに全員苛立ちと疲れが浮かんでいた。特に紀人は自宅に帰らず、まるで捜査一課で活躍していた時のように泊まり込みで捜査をしている。疲れが溜まるのも当然だろう。

「皆さん、今日はもう帰りましょう。ゆっくり休んで明日からまた考えませんか?捜査一課でも進展はしていないようですし」

紫月はそう提案した。修二たちもこの難事件に手を焼いている。廊下に備え付けられた自販機の前で苛立った様子でコーヒーを買う優我と智也を何度も見ている。

(夏祭りは行けそうにないか……)

まだギラギラと輝いている太陽を見ながら紫月は思った。街では夏祭りの準備が進められており、着物屋では浴衣のセールも行われていた。
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