Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

（アノニマスと出掛けたかったが、俺は刑事だ。事件解決の方が大切だな）

頭の中でアノニマスの浴衣姿を想像してしまう自分に呆れてしまうものの、この事件を解決できる自身はない。その時だった。紫月のスマホに電話がかかってくる。

「島崎からか」

「太宰さんの協力者ですか！もしかして、事件解決に繋がるかも！」

蓮が目を輝かせたことで、疲れ切った様子だった紀人たちの顔色が変わった。真剣な表情になり、全員が紫月の近くに移動してくる。

「……電話に出ます」

紫月はそう言い、通話ボタンを押した。何故か電話は通常の電話ではなくテレビ電話である。しかし、真夜がそうした理由はすぐにわかった。

「島崎……とアノニマス！何で二人が一緒なんだ！」

『やっほ〜！太宰さん』

シックな家具で統一されたカフェの個室にて、ブラックカレーを食べながら真夜が手を振る。その横にはコットン素材のサックスカラードレスを着てブルーのウィッグを被り、パールとビーズのアクセサリーをつけたアノニマスが座っていた。