Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
優我の言葉など聞こえていないかのように紫月はハオランを怒鳴り付けた。まるで自分が怪物になったかのように感情が制御できず、溢れ出してくる。

「お前が!!お前が綾音を殺したのか!!綾音の未来を奪ったのか!!綾音はな、お前がバイトをしていた法医学研究所の幸成と付き合っていたんだぞ!!夢を叶えて幸せに暮らしていたんだ!!なのに、全部お前が……!!」

感情のままに叫ぶ紫月の視界がぼやけた。涙が止めどなく溢れてくる。ハオランは小さな声で何かを呟いていたが、紫月の耳には届かない。

「吐け!!綾音をどこへやった!!綾音を返せ!!このクソ野郎!!殺してやる!!お前を殺してやる!!」

「太宰!!」

紫月が拳を振り上げたその瞬間、その腕が強く掴まれた。修二である。修二に名前を大声で呼ばれ、紫月は我に返った。修二の方をゆっくりと見れば、彼は苦しげな表情を向けている。

「……お前の気持ちはよくわかる。だが、お前は刑事だ。それを忘れるな。一線を越えることをお前の大切な人は望んでいない」
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