Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
怒り、悲しみ、絶望ーーー。人の死には様々な感情が渦巻く。それが殺人による理不尽な死だとすれば感情はさらに大きくなる。

「怒ったりするものか。俺だって、あいつから綾音を殺したことを聞いた時は殺してやろうと思った。この気持ちは決しておかしくない!」

「綾音……。僕が、一生守って幸せにするって約束したのに……。どうして!?」

幸成が自分の膝を何度も叩く。そんな彼を紫月は泣きながら抱き締める。

悲しみは時間が解決してくれるという言葉がある。しかし、この世界で一番愛する人を失った悲しみは癒えることはない。傷は時間をかけて瘡蓋になっていくものの、ちょっとしたことで傷口は開き、血と涙がまた溢れていく。その繰り返しなのだ。

紫月と幸成は子どものように泣いた。














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