Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
くすみグリーンの生地に白い大きな花柄、そして白い帯を結んだアノニマスはいつもより大人びて見える。固まる紫月を見て、アノニマスは首を傾げた。

「どうした?熱でもあるのか?」

「いや、普段と違う格好だから驚いてな。お前ならロリータで来るのだと思っていた」

「和風ロリータは確かにあるが、この浴衣が気に入ってな」

「そうか」

行こうか、と歩き始めた紫月に向かってアノニマスがニヤリと笑う。その表情に紫月の胸が高鳴った。

「お前も浴衣なんだな。似合っているじゃないか」

「あ、ありがとう。お前も似合ってるよ」

頰に熱が集まるのを紫月は感じた。心に空いた大きな穴が、アノニマスを見ると少しの間だけ忘れることができる。浴衣姿のアノニマスを何度も紫月は目で追ってしまう。

頭に飾られた髪飾り、雪のように白いうなじ、小さな歩幅、ロリータを着ている時よりも派手なメイク。アノニマスを見るたびに普段と違う彼女を見つめてしまう。

(綺麗だな……)

何度も心の中で呟く。
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