Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
唇が離れた後、アノニマスは顔を真っ赤にして先ほど触れ合っていた唇に手を当てていた。そんな彼女に対する想いを紫月は口にする。

「好きだ」

アノニマスの華奢な肩が震えた。紫月は頰の熱を感じながらもう一度言う。

「俺は、アノニマスのことが好きなんだ。ずっと前からーーー」

「やめろ!」

アノニマスは彼を睨み付けていた。そして紫月に背を向ける。

「あたしにそんな感情を抱くな」

アノニマスはそう吐き捨てるように言うと、逃げるように走って行く。紫月はそれをただ呆然と見つめることしかできなかった。














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