Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
紫月はその女性から目が離すことができなかった。一般的な女性よりもずっと小柄で華奢な体のせいか、ロリータという派手な格好のせいか、瞳は女性しか見ることができなかった。

「ッ!」

視線に気付いたのか、女性がパトカーの方に目を向けた。目が合ったような気がした。刹那に紫月の体が雷に撃たれたかのような感覚が走った。

「樋口さん、あの女性を知っていますか?」

「はい、知っています。先生と同じ階に住んでいる泉翡翠(いずみひすい)さんです。職業は先生と同じ小説家です」

皐月の言葉を聞いて紫月は弾かれたようにパトカーから飛び出した。すぐに「太宰さん!?」と言いながら蓮もパトカーから出てくる。

「泉さんに話を伺う!」

それだけ言い、紫月はマンションの中へと入って行く翡翠の後を追いかけた。












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