Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「何なんでしょうかね、この絵」

「さあな。読者がたまたま思い付いたものを描いたんじゃないか」

そう言いながら紫月と蓮は立ち上がる。これから慎吾の元妻の辻村明美(つじむらあけみ)に話を聞きに行くのだ。明美は東京ではなく神奈川の横浜に高校生の娘と暮らしている。

「横浜か〜。中華街の肉まんおいしいですよね!あとサンマーメンと牛鍋とよこすか海軍カレー!」

「夏目、甘いぞ。横浜と言ったら生プリンだろう。マラサダを売ってる店もあるし、カニッシュを売ってる店もSNSで話題になっていたな」

「すいません、マラサダって何ですか?あとカニッシュって蟹のお菓子ですか?」

「……調べてみろ」

そんな話をしながら廊下を歩いていると、「よぉ、警視庁のお荷物さん」と人を見下した刺々しい声が響く。二人が振り返ると優我がニヤニヤしながら近付いてくるところだった。

「二人してこれからどこに行くんだよ?俺たちが捜査で忙しい中のんびりティータイムでも楽しみに行くのか?」

「事件の捜査に決まってるだろう!これから被害者の元妻に話を聞きに行くところだ」
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