Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜

木の葉を隠すなら森の中

「ーーーあなたには条野さんを殺害する動機があるんです」

狭く、容疑者と捜査官が向き合って座る椅子と机、そして取り調べの様子を記録する捜査官のパソコンしか置かれていない無機質な取り調べ室に智也の声が響く。

「私が条野さんに体を触られそうになったことですか?一度だけですし、触られる前に逃げて、私はそれからは条野さんを避けて生活していました。動機はないはずです」

そう冷静に答える翡翠は、この前に会った時とは違い、髪は銀髪のボブになっていた。どうやら服に合わせてウィッグを被っているようだ。黒い帽子を被り、紫の大きなリボンとレースのついた白いブラウスと紫のスカートを履いている。

「いいえ、あなたには動機がある。この人の動画がその答えだ」

智也はスマホを取り出し、ある動画を再生させる。それは「まーくん」という名前のYouTuberの最新動画だった。彼は様々な業界の抱える闇を暴露する動画を投稿しているようだ。

『今回の闇はこちら!小説家の闇〜!なんとあの人気小説家が他の小説家のトリックをパクったらしいんすよ』
< 44 / 306 >

この作品をシェア

pagetop