Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「太宰さん、左遷されたんじゃなかったっけ?事件の捜査なんてしていいの?」

「捜査一課に返り咲くためなら今起きている捜査もするさ」

「ふ〜ん。組織の中で生きてるって大変だね。僕は絶対に無理だな。一人の方が気楽に仕事できるし」

「島崎、事件の概要を話すぞ。悪いがのんびり話している暇はない」

真夜に紫月は事件のことを話す。興味なさそうな顔をして聞いていた彼は、話が終わるとテーブルの上にパソコンを出した。

「要はその容疑者と被害者、そして第一発見者の過去を調べればいいってこと?」

「そうだ。頼めるか?」

「もちろん!僕ならこんなの調べるのに三分もかからない」

真夜はパソコンのキーボードを押していく。そのスピードはとても早く、紫月はその様子を見ながらココアを飲んだ。生クリームの甘さとココアのほろ苦さが紫月の舌の上を通っていく。

紫月と真夜の関係は協力者だ。二年前、ある事件をきっかけに二人は知り合った。真夜は高校生とは思えないほどパソコンの腕があり、ハッキングなどもできる。その腕を紫月は買い、捜査の協力を求めることがあるのだ。
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