Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
真顔でそう言った真夜に紫月はお礼を言い、伝票を持って席を立った。ファミレスを出るとすぐにスマホを取り出し、蓮に電話をかける。

「太宰さん、今ちょうど連絡しようと思ってたところなんですよ!条野さんの元奥さんから話を聞き終えたので」

横浜のマンションで慎吾の元妻の明美と娘の美紅(みく)に蓮は話を聞いた。事件があった四月二日は看護師の明美は一日中仕事があり、美紅は友人たちとディズニーリゾートへ遊びに行っていたそうだ。

「アリバイの裏どりはまだですけど、二人が嘘を言っているようには見えませんでした」

「そうか。わかった。これから俺は宮崎に行ってくる」

「えっ!?宮崎ってあの九州の宮崎ですか!?」

「そうだ。土産に宮崎マンゴーラングドシャを買ってきてやろうか?宮崎塩キャラメルナッツクッキーでもいいぞ」

「僕は鶏の炭火焼がいいです!それか宮崎辛麺!」

「わかったわかった」

電話を切った後、紫月は空港まで愛車の白のハリアーを走らせる。泉翡翠は宮崎でどのように暮らしていたのか。それを知ることに小さじいっぱい程度の不安を感じていることに気付いた。
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