Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「あなたは条野さんと揉み合った際にコンタクトが外れてしまった。その時に眼球を傷付けた」

「その証拠はあるんですか!?」

「それは部屋に落ちていた水槽です」

「水槽?それがどうかしたんですか?」

紫月は初めて現場を見た時のことを思い出す。熱帯魚の入った大きな水槽が落ちていた。

「どうして大きなものが落ちていたのか不思議だったんです。大柄な男性がぶつかったら倒れることもあるかもしれない。でもあなたがぶつかっただけで倒れるとは思えない」

「だから何なんですか!?」

「あなたはあるものを隠すために水槽を落とす必要があったんです」

「何を隠すって言うんですか!?」

皐月の左手でガラス製のブレスレットが揺れる。それを見て修二が「それですよ」と言う。皐月は顔を真っ青にしながらブレスレットに触れた。

「揉み合っている最中にガラスのブレスレットも千切れ、床に落ちて割れてしまった。でもその前にコンタクトが外れてしまって細かい破片が見えない。だからガラス製の水槽を落として割るしかなかったんですよね」
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