Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
SNSで皐月は仕事の際につけるブレスレットは羽をモチーフにしたものだと話していた。しかし、皐月は事件が遭った後からそのブレスレットをつけていない。

「あなたは条野さんを殺害した後、アリバイ工作をすることにしました。防犯カメラが故障していることを知っていたんでしょう?泉さんを呼び出して彼女に疑いが向くようにしたんです」

「これを使ってね」

蓮がそう言い、部屋のテレビをつける。そしてテレビの録画欄には彼が演じた「死神の告白」が録画されていた。

「この映画の中には「今すぐに家に来てほしい」と「やっぱり後にしてくれ」という台詞がありました。これを泉さんに聞かせたんですよね」

そう蓮が言った後、皐月は「フフッ」と笑い始めた。笑い声は次第に大きくなり、部屋中に響いていく。

「そうよ!私があの男を殺したのよ!豚のように醜いあいつをね!」

皐月は高校生の頃、とある女子生徒をいじめていた。その様子を演劇部の指導に来ていた慎吾に見られ、「バラされたくなければ言うことを聞け」と脅されていたのだという。

「最悪よ!進路も何もかもあいつが決めやがった。私は興味ない大学に入って、興味ない出版社に就職して、あいつに人生を操縦されてた。あいつは私の人生をめちゃくちゃにしたんだよ!」

そして慎吾の元で働いた皐月は、慎吾が小説を思い付けなくなった際、翡翠から小説のトリックを盗むように言われ、彼女が目を離した隙に小説のトリックを調べ、それを慎吾に教えていた。ファンレターを装い、絵を暗号にしていたという。
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