Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
顔を歪め、息を荒くしながら皐月は唾を飛ばす。皐月によると彼女は恋愛することすら許されていなかった。相手に全てをバラすと言われ、慎吾の相手をさせられていたのだという。それに耐え切れなくなっての犯行だった。

「……署までご同行願います」

修二がそう言い、皐月は連行されていく。その姿を見ていた紫月は蓮に肩を叩かれた。

「太宰さん!やりましたね!これで捜査一課へ返り咲く道が一歩開けましたよ!」

中原さんと志賀さんにすぐ報告しましょう、と目を輝かせる蓮に紫月は「先に帰ってくれ」と言う。キョトンとする蓮に紫月は寄らなくてはならないところがあると言い、慎吾の部屋を出た。その足ですぐに翡翠が住む部屋へと向かう。

「事件は解決したようですね」

そう言って笑った翡翠は、若草色の生地にピンクの花が散りばめられたワンピースを着ていた。髪の色はチョコレートブラウンで後ろで複雑に編み込みがされ、緑のリボンが飾られている。

「ええ。そのことで少しお話があるのですがよろしいですか?」
< 62 / 306 >

この作品をシェア

pagetop