Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「ユキちゃん、最近ピザにハマってるみたいなんだよね。どうやって作ったの?」

「えっとですねーーー」

蓮が彰にピザの作り方を教えようとしたその時だった。警視庁内に放送が鳴り響く。

『事件発生!事件発生!場所は千代田区丸の内××ー×××!捜査員は直ちに現場に向かってください』

「行くぞ、夏目!」

「はい!太宰さん」

紫月と蓮は部屋を飛び出し、走り出す。五月の温かく澄んだ風が頰を撫でた。



事件現場となったのは、人々が祝福される場所だった。幸せな人生の一歩を踏み出す場所ーーー結婚式場である。クラシックとモダンが交差した雰囲気の式場を見て蓮が声を上げる。

「ここって結婚式場ランキングで一位に選ばれてたところじゃないですか!」

「何でそんな情報を知ってるんだ?」

「妹が付録目的で読んでた結婚情報誌に書いてあったんですよ!」

蓮によると、この結婚式場は内装に凝った挙式会場や披露宴会場が多くあり、食事もおいしく、長年結婚式場人気ランキングで一位の座を獲得し続けていたそうだ。

「そんな場所で事件か……」
< 82 / 306 >

この作品をシェア

pagetop