Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
新郎は紫月のいる挙式場の出入り口の方に顔を向けている。その顔は苦しみから大きく歪み、口からは泡が出ていた。紫月は拳を握り締め、今日幸せの一歩を踏み出す予定だった遺体に近付いていく。
「幸成」
遺体の様子を見ている監察医に紫月は声をかけた。幸成は顔を上げ、マスクを外した後に「来ていたのか」と口を開く。紫月が頷くと彼は遺体の身元などを教えてくれた。
「被害者は森圭太郎(もりけいたろう)さん。年齢は二十七歳。株式会社フォレストの次期社長」
「株式会社フォレスト……」
それは全国にも名の知れた企業である。現社長の森和成(もりかずなり)氏が一代で企業した会社だったが、たった数年で全国規模にまで成長した会社である。
「死因はやはり毒によるものか?」
「体に目立った外傷はないから、恐らく毒によるもので間違いないと思う。ただ何の毒かは解剖してみないとわからないけど」
幸成がそう言った時、出入り口の前が一気に騒がしくなった。制服警官が「落ち着いてください!」と大きな声で言う。それを遮るかのように「落ち着いていられるか!!」と男性の怒鳴り声が響いた。
「幸成」
遺体の様子を見ている監察医に紫月は声をかけた。幸成は顔を上げ、マスクを外した後に「来ていたのか」と口を開く。紫月が頷くと彼は遺体の身元などを教えてくれた。
「被害者は森圭太郎(もりけいたろう)さん。年齢は二十七歳。株式会社フォレストの次期社長」
「株式会社フォレスト……」
それは全国にも名の知れた企業である。現社長の森和成(もりかずなり)氏が一代で企業した会社だったが、たった数年で全国規模にまで成長した会社である。
「死因はやはり毒によるものか?」
「体に目立った外傷はないから、恐らく毒によるもので間違いないと思う。ただ何の毒かは解剖してみないとわからないけど」
幸成がそう言った時、出入り口の前が一気に騒がしくなった。制服警官が「落ち着いてください!」と大きな声で言う。それを遮るかのように「落ち着いていられるか!!」と男性の怒鳴り声が響いた。