Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
(さすが芥川さん!)

紫月が修二の行動に尊敬を覚えていると、「チッ!」と智也が大きく舌打ちをする。彼は眼鏡をクイッと押し上げながら、紫月を睨んでいた。

「芥川さんは甘すぎるんだよ。今の部下はお前じゃなくて俺たちなんだ。邪魔するなよ」

紫月はその言葉を無視して再び遺体と向き合う。この事件を次は自分の力だけで解決する、そう心の中で何度も呟いた。



「ーーー要するに、株式会社フォレストについて詳しく調べろってことでしょ?」

結婚式場近くのファミレスにて、真夜がトントンと指でテーブルを叩く。苛立っているようだった。彼と向かい合って座る紫月の隣にいる蓮は、気まずそうな顔で紫月を見る。

「お兄さんさ、説明下手すぎ。どうでもいい話しないでよ。この前の事件で疑われた女性がいたとか、次期社長の父親が現場検証中に乗り込んできたとか、そんなのどうでもいいから!時間の無駄!」

「そ、そんなぁ……」

一生懸命事件の話をした蓮は落ち込んだ様子を見せた。紫月の協力者である真夜に蓮が会うのは初めてだ。
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