Anonymous〜この世界に生まれた君へ〜
「ほら、ここ」

株式会社フォレストの送金履歴を真夜は指差す。そこには多くの会社の名前があったのだが、その中に確かに水月町という町の名前があった。蓮が首を傾げる。

「何県にある町なんですか?」

「水月町があるのは和歌山県だよ。お兄さん、大人のくせにそんなことも知らないの?馬鹿なの?学生時代ちゃんと勉強した?」

真夜に刺々しい言葉をかけられ、蓮は固まって口を閉ざす。紫月はチラリと蓮を見た後、顎に手を当てて考える。

「森社長は和歌山県じゃなくて島根県出身だ。この水月町に何かあるのか?」

「水月町っていうか、和歌山県はあの近畿地震で大きな被害を受けたよね。その復興支援に株式会社フォレストは力を入れてたみたいだよ。特に水月町に多く支援をしてたみたい」

真夜はそう言いながらパソコンを操作する。紫月はひたすら考えていた。和成は何故自分とは何の関係もない町に多くの支援をしているのか。町にはこれといった特産品もなく、目立った観光地もない。支援してプラスになることがはっきり言うとないように思えた。
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